転倒は若い人であれば軽いけがで済みますが、高齢者にとっては大きな事故につながります。「平成27年版 高齢社会白書(全体版)」(内閣府)によると、高齢者が要介護状態となる主な原因は、脳梗塞などの脳血管疾患(脳卒中)、認知症、高齢による衰弱と続き、『骨折・転倒』は全体の12.2%を占め、4番目の多さになっています。
転倒は骨折に結びつきやすく、太ももの付け根(大腿骨頚部)や背骨(脊椎)、腕の付け根(上腕骨頚部)、手首(橈骨遠位端)などです。特に大腿骨頚部骨折は、歩けなくなったり寝たきりになったりする可能性が高くなります。
転倒の原因は「内的要因」と「外的要因」があります。

まず、「内的要因」では加齢による①視覚・聴力の変化、②バランス能力・歩行の変化、③骨・筋肉の変化、④病気・薬の影響があげられます。特に④の病気・薬の影響では脳梗塞などの脳血管疾患(脳卒中)の前兆として転びやすくなる場合があります。その他、認知症・パーキンソン病・起立性低血圧・不整脈・関節リウマチなども転倒を起こしやすい病気です。また、薬の副作用による眠気・めまい・ふらつきなどが転倒の原因になることもあります。
次に「外的要因」ですが、①足を滑らせやすい雨や雪が降った日、足元が暗い夜間や早朝などの状況や焦っていた、イライラしていたなどの心理状態、②滑りやすいマットや床、小さな段差、暗い廊下などの環境や脱げやすい靴やスリッパ、身体に合わない補助具や車イスなどの設備があげられます。
当施設はもちろんバリアフリーの環境です。また、ご利用者様一人ひとりの身体の状態を検討し使用される補助具や車イスを選定しております。

その他、筋力が低下して足が上がりにくく、すり足になりがちな高齢者は、多少の段差でもつま先が引っかかって転倒しやすくなります。そのため、靴下や靴を選ぶときは、つま先が自然と反り上がる構造のものにすると、つまずきにくく歩き出しもスムーズになります。そして、靴底や足裏に滑り止めが付いているタイプのものは、足をすべらせて転倒する可能性も低くなります。また、着脱の際の簡便さから、マジックテープやファスナー付きのものを選ぶようアドバイスしております。しかし、これだけ注意をしていても転倒は起こってしまうものです。当施設ではその可能性をなるべく低くするよう日々研鑽しております。